連載記事-時計デザインの原点を辿る、古典顔愛好会“トリプルカレンダームーン編”


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時代の移り変わりとともに腕時計の意匠も変化している。ここではいまではあまり見ることがなくなった古典ディテールを、あえて採用することでアンティークウオッチさながらの魅力を持ったモデルを紹介していく。今回は機械式時計黄金期にである1950年代に流行した“トリプルカレンダームーン”を紹介していこう。

クォーツの弱点が改善され、近年増えてきた複雑機構系モデル

機械式ではクロノグラフに並ぶ複雑機構であり、高級モデルとして展開されたトリカレムーン。
その魅力は、三つのカレンダー表示を備えた高い実用性のほかにも、緻密な文字盤やムーンディスクが醸し出す神秘的な雰囲気などデザイン面も挙げられる。この独特な意匠に魅了されるファンは多く、その人気はいまも根強い。

一方、多くの支持を獲得し、ジャンルとして確立しながらも、クォーツ時計にトリカレムーンモデルは圧倒的に少なかった。その理由は、古典的な意匠がカジュアルに使うことが多いクォーツ時計になじまなかったなど、色々と考えられるが、1番は技術面にある。
それはずばりクォーツムーヴメントのトルクが機械式に比べて弱かったためだ。
ちなみにクォーツ時計の針が比較的短い理由も、トルクの弱さゆえである。多針なうえムーンディスクまで必要なトリカレムーンモデルがクォーツ時計になかった理由にも納得だろう。
しかし、近年クォーツムーヴメントは進化し、トルクが向上。トリカレムーンモデルを見かけることも多くなってきた。しかも、機械式に比べ、価格はリーズナブルというのも大きな魅力である。
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上のモデルは、1950年代に製造されたユニバーサルの傑作トリコンパックス。トリプルカレンダーとムーンフェイズに加え、クロノグラフも搭載していた。
トリカレムーンはその華やかなデザイン性もさることながら、クロノグラフに並ぶ複雑機構でもあり、自社の技術力の高さを示すのにもうってつけであった。当時、ジャガー・ルクルトやロレックス、オメガなどもトリカレムーンを展開していた。
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当時のムーンフェイズ表示には、月に表情が加えられたモデルも多かった。表情は様々あり、各社の違いを見比べてみるのも面白い。

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ZEPPELIN(ツェッペリン)
ヒンデンブルク
大西洋横断の定期旅客便“LZ129 ヒンデンブルク号”がモチーフ。インダイアルで日・曜日を表示し、センター針でポインター式の52週表示を持つ。古典的なスタイルだが、一方ではシルバー文字盤やミラネーゼブレスを備え、現代的にアレンジされている。
■Ref.7036-M1。ステンレススチールケース、ミラネーゼブレス。ケース径40mm。3気圧防水。クォーツ。5万6160円

【問い合わせ先】
ウエニ貿易(☎︎03-5815-3277)
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【今回のテーマ“トリプルカレンダームーン”とは】
日・曜日・月の三つのカレンダー表示に加えて、月の満ち欠けを示すムーンフェイズ機構を備えた複雑モデルを、トリプルカレンダームーンフェイズ、通称“トリカレムーン”とも呼ぶ。これが流行したのは、機械式の黄金期である1950年代。当時は、戦争の傷も徐々に癒えはじめ、ファッションも華やかになってきた時代であり、腕時計のデザインにもこうしたエレガントさが求められていた。

【古典顔(こてんがお)とは?】
古い時代に主流となっていたディテールやデザインを踏襲して、アンティークウオッチさながらの意匠を備えた腕時計のこと。腕時計は誕生からまだ100年余りと歴史は浅いが、その間急激な発展を遂げたため、時代によって様々な意匠が楽しめる。

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