アンダー10万円! スイスの古豪が手がけたレトロな機械式時計/編集部:船平のカジュアル時計レビュー


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編集部のカジュアルウオッチ担当:船平が、実機を見て“コレは欲しい!”と思ったモデルを本音でレビュー。今回は、知る人ぞ知るスイスの機械式時計ブランド“WEST END WATCH Co.(ウエスト エンド ウォッチカンパニー)”をお届けしよう。

WEST END WATCH Co.
ウエスト エンド ウォッチカンパニー

素材の価格や人件費の上昇などにより、価格の上昇が進む時計市場。ロレックスのような世界的なメジャーブランドは、どこのブランドのモデルも価格が底上げされており、入門機であっても50万円以上、場合によっては100万円に近い価格という、ユーザーにはなかなか悩ましい状況が続いている。

しかし、そんな状況でも諦めるのはまだ早い。メジャーな高級ブランドが高額化を進める一方、近年は加工技術の進化や、汎用ムーヴメントの多様化に伴って、小規模のインディペンデントブランドや、中堅ブランドの時計が、手頃な価格を維持しつつ高品質化しているのだ。

特に注目なのが、時間表示以外に余計な機能を搭載していない、3針のベーシックモデル。

10万円前後という入門機のプライスゾーンは製作コストに制限があるため、無理に機能を増やすとその分、どこかでコストダウンを行う必要が生じる。その点、3針のベーシックなモデルならば、製作コストを文字盤やケースに集中できるため、10万円前後の価格帯でも、品質の確かな時計を探すことができるからだ。

そうした点を踏まえ、今回はスイスの時計ブランド“WEST END WATCH Co.(ウエスト エンド ウォッチカンパニー)”の3針モデルを選んでみた。まずは、時計をする前にブランドの簡単な紹介をしておこう。

“WEST END WATCH Co.(ウエスト エンド ウォッチカンパニー)”は、1886年に創立されたスイスの腕時計ブランド。第一次世界大戦時に英国軍に時計を供給した実績を持ち、当時、英国領であったインドでも軍用時計、鉄道時計として流通した歴史を持つ。今回、レビューする“プリマ”は、そんな同社のアーカイブにある用時計をリモデルした“ヴィンテージシリーズ”のひとつだ。

》デザインの印象は?
文字盤外周に5分刻みのアラビア数字と分目盛り、内側に12・3・9のアラビアインデックスをレイアウト。インデックスの配置はどことなくロレックスのエクスプローラーⅠを彷彿とさせるが、分目盛りとアラビアインデックスの間に配置されたゴールドのリング、分表示の視認性を重視したデザインにより、個性を主張する。
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このあたりの独特のセンスは英国領であったインド市場のニーズを反映したものと思われるが、ほかのスイスブランドには見られない意匠がマニア心をくすぐってくる。個性的なだけでなく視認性も高く、デザインバランスが良好なのも大きな魅力といえるだろう。

外周のアラビア数字、12・3・9のアラビアインデックス、時分針には夜光塗料が塗布されており夜間の視認性も良好。ラッカー仕上げを施した光沢のある黒文字盤と、ゴールドリング、赤い秒針のコンビネーションも面白い。12時位置に秒針と同じ赤で印字された“Sowar(ヒンディー語で戦士の意味)”の文字がヴィンテージ感を加えている。
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細かいポイントで恐縮だが、個人的に好印象だったのがデイト表示の小窓。フレームや傾斜のないシンプルな作りの場合、単純な四角形に小窓を仕上げると、安価なプレス加工を思わせるチープ感が出てしまう。その点、このモデルは角を丸くしたデザインすることで、コストを抑えつつ文字盤に違和感なく馴染むように仕上げられている。

》装着感は?
ケースのサイズは39mmで厚さは約9mm(筆者が計測)。
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欧米人よりも手首が細い日本人でも付けやすいサイズ感なのに加え、ラグの先端が手首に触れる裏ブタよりもわずかに下にくるように設計にされており、ケースのフィットは良好。
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ただし、現状のベルトはケースに対してやや薄め。もう少し厚みのあるベルトだと、より装着感が高まるはずだ。

》ベルトの作りもチェック!
ベルトの素材にはカーフのスムースレザーを採用。
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ベルトの色味とトーンを合わせたステッチを施したラフなデザインに仕上げられている。ミリタリーテイストを感じさせる時計本体のデザインとの相性は良いが、ケースの厚みに対してベルトが薄いのが気になるところ。購入後はケースとのバランスを見て、好みのベルトに付け換えても良さそうだ。

【総評】
塗料の質感や厚みで立体感をうまく表現した文字盤、丁寧な鏡面仕上げを施したケースなど、コストを抑えつつ価格以上の品質を実現。
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ムーヴメントにはETA社製のCal.2836-2を搭載しているが、裏ブタはスクリューバックを採用しており、安易にシースルーバックにしていないのも好印象。9万円台という価格帯でありつつ、抜群のコストパフォーマンスを備えている。
文字盤のデザインが少々個性的なので好みが別れるかもしれないが、この独特雰囲気が好きな人は、ぜひ実機で品質を確かめて欲しい。本格機械式時計のエントリーモデルや、デイリーユースのセカンドウオッチとして、おすすめしたい良作だ。

》編集部のオススメモデル
WEST END WATCH Co.(ウエスト エンド ウォッチカンパニー)
ヴィンテージシリーズ“ソワールプリマ”
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■Ref. WE.PR.38.2T.L。SS(39mm径)。5気圧防水。自動巻き(ETA2836-2/スイス製)。9万8000円

文◎船平卓馬(編集部)

【問い合わせ先】
ブレインズ
》ウエスト エンド ウォッチカンパニー公式サイト
http://westend-watch.jp/index.html

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